笛と舞が共鳴するとき、そこに不思議な力が生まれる——平安末期の乱世を舞台に、孤独な武者と類まれな舞姫の切ない恋を描いた荻原規子の和風ファンタジーです。『空色勾玉』の世界に連なる作品として、荻原規子ファンはもちろん、日本の神話や歴史背景が好きな方にも自信を持っておすすめしたい一冊です。
基本情報
- 著者名:荻原規子
- ジャンル:和風ファンタジー・恋愛小説
- 時代・舞台:平安末期・日本
登場人物
- 草十郎:源氏方の十六歳の武者。野山でひとり笛を吹くことを好む孤独な若者。慕っていた義平の死に絶望する。
- 糸世:類まれな芸能の力を持つ舞姫。義平の魂鎮めの舞を舞う。
- 鳥彦王:カラスの姿をした鳥の王。草十郎と不思議な友情を結ぶ。
あらすじ
平安末期の乱世。源氏方の若き武者・草十郎は、慕っていた御曹司・義平を失い深く絶望していた。そんな折、義平の魂鎮めの舞を舞う少女・糸世と出会う。草十郎が笛を吹き、糸世が舞うとき、その場に不思議な力が生まれた。特異な芸能の力を持つ二人は、やがて波乱に満ちた運命へと引き込まれていく。
おすすめポイント
笛と舞が共鳴し、曼荼羅万寿の光の花が降り注ぐ場面は、文字を追うだけでその光景が目に浮かぶような美しさ。荻原規子さんならではの言葉の力が際立つ作品です。
悪源太義平・実盛・後白河院など実在の歴史的人物が登場し、その後の歴史的展開と物語がリンクする構造が巧み。ファンタジーとしても時代小説としても二重に楽しめます。
最初は反発し合う草十郎と糸世が少しずつ心を通わせていく過程は、読んでいてじわじわとときめきが募ります。二人の関係が深まるほど、訪れる試練の切なさも増していきます。
本モスの感想
慕っていた義平を失い絶望した孤独な青年・草十郎が、舞姫・糸世と出会うところから物語は動き始めます。最初は反発し合う二人が少しずつ心を通わせていく様子に、読みながらじわじわとときめいてしまいました。そして笛と舞が共鳴し、曼荼羅万寿の光の花が降り注ぐ場面——文字を追うだけでその美しさが伝わってくる荻原規子さんの筆力には、毎度ながら唸らされます。

二人の未来のために奔走する草十郎の切ない心中、そして鳥彦王との不思議な友情も物語に深みを与えていて、ファンタジーとしても時代小説としても存分に楽しめました。同じ著者の『空色勾玉』、そして本作の登場人物たちの後日談ともいえる『あまねく神竜住まう国』と合わせて読むと、この時代の世界観がより豊かに広がります。日本の美しさと神話・歴史を背景に輝く恋愛物語に大満足でした。
こんな方におすすめ
- 『空色勾玉』など荻原規子さんの作品が好きな方
- 平安末期の歴史背景や日本神話に興味がある方
- 切なくも美しい和風ファンタジーの恋愛小説を探している方


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