「どんでん返しの帝王」といわれる著者の本が読みたくなって、書店で手に取った一冊です。
登場人物
- 高輪顕真・・・浄土真宗の僧侶で教誨師。
- 関根要一・・・死刑囚。顕真の学生時代の友人。
あらすじ
教誨師の高輪顕真が拘置所で出会った男、関根要一は、かつて雪山で遭難した彼を命がけで救ってくれた友でした。本当に彼が殺人を犯したのか。調べるほどに不可解な謎が浮かび上がります。無情にも迫る死刑執行の刻、教誨師の執念は友の魂を救えるのでしょうか。
おすすめポイント<教誨師・司法制度とは何か>
教誨師とは刑務所や拘置所で活動するボランティアの宗教家のことで、仏教や神道、キリスト教など様々な活動家がいます。私も本書を読むまでその活動を知りませんでしたが、彼らは囚人の死刑執行にも立ち会うのです。
本書の主人公・高輪顕真は浄土真宗の教誨師であり、出家したときから教誨師を志していたものの、現実との乖離に悩んでいます。
死刑囚である友人の死刑執行に立ち会わねばならない悩み。そして事件を調べる中で、被害者遺族と関わる中での懊悩。サスペンス小説でありながら、主人公の目を通じて、司法制度について考えることができるのです。
おすすめポイント<隠された過去>
物語の主軸はもちろん、なぜ関根要一は死刑囚となったのかという謎です。ですが、それだけでなく、雪山での顕真と関根の事件のあらまし、顕真がなぜ出家したのか。過去の経緯が徐々に詳らかになっていく展開が物語に起伏を与えて飽きさせません。
おすすめポイント<中山七里ワールド>
著者の作品では、こちらの作品の主役があちらの作品の脇役で登場したりと、同じ世界で生きています。ですから、中山七里さんの他の作品を読んでいる読者にとっては、突然、あれっと思う人物が登場する楽しさが味わえるのです。
まとめ
中山七里さんの著書は、「大どんでん返しの帝王」といわれるだけあって、いつも後半でページをめくる手がとまらなくなります。今作でも、やはり夜更かししてしまう羽目になりました。一気読みできる時間に余裕があるときにおすすめの一冊です。
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