2026年3月の読書記録/春の訪れとともに、歴史と物語の世界へ

今月の棚

春めいてきた3月、今月も歴史の深みにどっぷりはまった読書月間になりました。日本史の入門書で足元を固めつつ、戦国時代の新書、ラムセス2世を主人公にした小説、そして中世フランスを舞台にした法廷小説まで。時代も国もまたいで読み歩くのが、すっかり癖になっています。

いまさら恐竜入門/田中康平・丸山貴史・マツダユカ

初期の恐竜はわりと弱い、ティラノサウルスの最大の武器は実は「鼻のよさ」、最大の肉食恐竜は魚派だった——「きほん」と「最新」を4コママンガ+解説でずらり80本。くすっと笑えてぐっと学べる、恐竜に興味がなかった人にこそ読んでほしい一冊です。

本モス
本モス

付箋だらけになるほど読み返している、個人的お気に入りの一冊です。なんといっても恐竜たちのイラストが可愛くて、それだけでもう十分なのですが、内容もしっかり面白い。子ティラノが父親をダディと呼ぶティラノサウルス親子のほのぼのっぷりも好きなのですが、私の推しはなんといってもトリケラトプス。ダディをライバル視しているくせに、いざ近づくと逃げてしまうそのギャップが、もうたまらなくツボでした。恐竜の本を読むのがすっかり習慣になってきましたが、気づけばどんどん沼にはまっていく気がします……。

「意思決定」の科学/川越敏司

なぜ、自分は人と違う選択をするのか——その背景を「意思決定理論」が明らかにする一冊。リスクのある状況下で人がどう判断するかを解き明かす「期待効用理論」を出発点に、確率の歪みと損失回避性を加えた行動経済学の重要理論「プロスペクト理論」、さらには時間選好・社会的選好まで、様々な状況下での選択を実験をとおして解説します。

本モス
本モス

「期待効用理論」「プロスペクト理論」——言葉の響きだけで少し身構えてしまいましたが、読み進めるうちになんとなくそのイメージはつかめてきました。正直なところ、中盤あたりからは理論そのものを理解しようとするのは早々に諦めて、言わんとしているイメージをぼんやり追いかけるのが精いっぱい。それでも、人はリスクのある場面で期待値ではなく「自分にとっての価値」を最大化しようと動くのだという考え方は、読み終わったあともじわじわと頭に残っています。そういえば自分もこんなふうに意思決定していたかも——そんなことをぼんやり考えるきっかけをくれた一冊でした。『直感を裏切る数学』に続き、またしても難しい本に挑んでしまいましたが、完全に理解できなくても挑戦する価値はある、と信じることにします。

王妃の離婚/佐藤賢一

1498年フランス。ルイ12世が王妃ジャンヌに起こした離婚訴訟は、王の思惑通りに進むかと思われた。そこに立ち上がったのが、零落した中年弁護士フランソワ。かつてパリ大学法学部にその人ありと謳われた男が、裁判の不正に憤り、窮地の王妃の弁護を引き受ける——正義と誇りと愛のために。第121回直木賞受賞の中世版法廷サスペンス。

本モス
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若い頃の挫折や失敗を抱えたまま中年を迎えたフランソワが、もう後がない一世一代の裁判で颯爽と立ち上がる——その場面の高揚感といったら、思わず本を握る手に力が入りました。どう考えても勝ち目のない状況で、かつての実力をじわじわと取り戻しながら法廷に立つ姿は、読んでいてとにかくスカッとします。若い頃に夢見ていたものを取り戻す物語は、氷河期世代にはどこか他人事とは思えないところもあって、余計に胸に刺さりました。法廷ドラマの醍醐味がぎゅっと詰まった一冊です。

太陽の王 ラムセス1/クリスチャン・ジャック

古代エジプト第十九王朝。王セティ一世のもと帝国の再建を目指す中、次代の王座を争うのは実の兄弟——勇猛で情熱的な第二王子ラムセスと、狡猾な兄シェナル。忍び寄る魔の手、降りかかる過酷な試練。エジプト史上最も偉大なファラオと呼ばれたラムセス二世の、波乱万丈の青春を描く大河歴史ロマン全5巻の第一作。

  • ラムセス・・・セティ王の第二王子。勇猛で情熱的。
  • シェナル・・・セティ王の第一王子。ラムセスの兄。狡猾で肥満体。
  • イシス・・・貴族出身の美しい娘。シェナルに求婚されるが、ラムセスを愛する。
  • ネフェルタリ・・・貧しい家出身の、聡明で魅力的な娘。
  • アメニ・・・ラムセスの友。ラムセスの専属書記となる。
  • モーゼ・・・ラムセスの友。ヘブライ人。
  • セタオー・・・ラムセスの友。自然を愛する蛇遣い。
  • アーシャ・・・ラムセスの友。貴族の息子で外交官となるが。
本モス
本モス

史上最も偉大なファラオとして名高いラムセス二世も、物語の出発点では到底王になれるとは思われていない境遇からのスタート。兄シェナルの狡猾さに翻弄されながら、青年ラムセスがどう昇り詰めていくのか——読むほどにワクワクが募ります。友人として登場するのが、書記のアメニ、蛇使いのセタオー、そしてヘブライ人のモーゼというのが心憎い。さらにトロイ戦争のヘレネまで顔を出すとなれば、歴史ロマン好きとしてはもう続きを読まずにはいられません。2月に読んだ古代エジプトの入門書の知識が活きて、背景をイメージしながら楽しめたのも収穫でした。

商人の戦国時代/川戸貴史

中央権力が衰退し混迷する戦国時代、旧来の秩序を破る新興商人たちが台頭していく。新旧商人の縄張り争い、金融業の出現、利権ビジネスと借金トラブル、「楽市・楽座」の実態——幕府、朝廷、大名、寺社、海外勢力が乱立する時代に、商人たちは何を頼りに秩序と自由の狭間を生き延びたのか。史料に現れる余りに人間的なエピソードから、乱世を生き延びる戦略を学ぶ一冊。

本モス
本モス

戦国時代といえば武将たちの合戦や権謀術策に目が向きがちですが、本書を読むと商人たちもまた負けず劣らずしたたかに乱世を生き抜いていたことがよくわかります。酒の流通を支配することで米の価格まで操ろうとする領主の思惑、武士の争いを利用してしっかり稼ごうとする商人の力強さ——戦場とは別の場所で繰り広げられる駆け引きに、思わず引き込まれました。特に関所の通行権をめぐる争いは、現代の司法制度からは想像もできないほど様々な利権が絡み合っていて、読んでいて目が離せませんでした。武将だけでない、もうひとつの戦国時代の生き様を知りたい方にぜひおすすめしたい一冊です。

太陽の王 ラムセス2/クリスチャン・ジャック

亡き父セティ王の喪が明け、ついにラムセスに即位の時が来た。しかし若きファラオの周囲では裏切りと陰謀が渦巻き、豊穣の地エジプトを狙う権謀術数が火花を散らす。アブ・シンベル大神殿、巨大都市ペル・ラムセスの建設に着手しながら、光の息子ラムセスの治世がいよいよ幕を開ける。大河歴史ロマン第二巻。

本モス
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ついにファラオとなったラムセスの快進撃が始まる第二巻。期待値ゼロから頂点へ駆け上がっていく物語はやっぱり爽快で、アブ・シンベル大神殿やペル・ラムセスの巨大建築に着手する場面には思わずテンションが上がりました。ただ、周囲には裏切り者や諜報員が溢れていて、「そんな奴を信じてはダメだ!」とハラハラしっぱなし。読んでいる間じゅう、ラムセスに向かって心の中で叫んでいました。そして今巻でラムセスの姉夫婦サリとドレントがいよいよ本格的に嫌いになりました。これほど「早く続きを」と思わせるシリーズも久しぶりです。第三巻が手元にあるのが救いです……!

2時間でおさらいできる日本史/石黒拡親

「中学・高校で習ったはずの日本史をもう一度整理したい」「時代小説やドラマをもっと楽しみたい」「年代暗記ではなく、歴史の大きな流れをつかみたい」——そんな人にぴったりの日本史講義。各章の冒頭に「1分でわかる時代の概要」を配し、歴史の流れをダイナミックに読み解く入門書です。

本モス
本モス

高校で日本史を選択しなかった私でも、さらりと読み通せました——ただし、2時間ちょっとかかりましたが。中学社会で知識がストップしたままでも、日本の歴史の流れがなんとなくつかめた……気がします。特に興味深かったのが南北朝の動乱。足利尊氏と後醍醐天皇の対立だとばかり思っていたのですが、尊氏の弟・直義も加わった三つ巴の政局だったとは、まったく知りませんでした。また、室町時代に貨幣の質が悪く撰銭が行われていたという話は、読んだばかりの『商人の戦国時代』と見事につながって、思わずニヤリ。本と本が知識でつながる瞬間は、読書の醍醐味のひとつだなと改めて思いました。

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