今さらながら古典入門―曲亭馬琴にハマった話

学びの棚

ファンタジー小説が大好きなのですが、よく考えたら洋風ファンタジーの比率が高いことに気がつきました。日本にだって昔から伝奇小説という、立派なファンタジーがあったのに。というわけで、まずは有名な曲亭馬琴(滝沢馬琴)から読み始めてみました。これが思いのほか面白くて、徐々に他の伝奇小説にも手を広げていこうと企んでいます。

南総里見八犬伝/平岩弓枝 文 佐多芳郎 画

「仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌」──八つの霊玉を宿す八犬士たちの活躍を描いた『南総里見八犬伝』。馬琴といえば八犬伝といっても過言ではありません。
滝沢馬琴の長大な原作を、平岩弓枝さんが現代語でぐっと読みやすく語り直しています。
正直、原作は人物も多くて名前も難しく、途中で迷子になりがちですが、この本は解説が要所に入り、挿絵も豊富でとても親切。
一気に読めて、しかも物語のスケール感も味わえる、八犬伝デビューにぴったりの作品でした。

  • 伏姫・・・里見の姫。八つの霊玉を生み出す
  • 八房・・・伏姫を慕う犬
  • 玉梓・・・里見義実に討たれた毒婦。怨霊となって里見家を呪う
  • 犬塚信乃・・・八犬士の一人。孝の玉を持つ
  • 浜路・・・信乃の許嫁。養父母に咎められても信乃を慕う
本モス
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『南総里見八犬伝』の魅力は、なんといってもジェットコースターのような展開の早さと、わかりやすい勧善懲悪!
善人はどこまでも清らかに、悪人はとことん悪を貫く――その潔さが心地よく、読めば気分爽快です。
江戸時代に書かれたとは思えないほどテンポがよく、まるで時代劇を観ているよう。
そして何より、登場人物の多さに苦戦していた私にとって、平岩弓枝さんの現代語訳はまさに救世主でした。ありがとうございます。

南総里見八犬伝/曲亭馬琴 石川博 編

「仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌」の文字が刻まれた霊玉と、牡丹の痣を持つ八人の犬士たちの壮大な物語を描いた、滝沢馬琴の大長編伝奇小説『南総里見八犬伝』。本書は名場面とあらすじで物語を辿る解説書で、事前に平岩弓枝さんの『南総里見八犬伝』で現代語訳の流れを掴んでいたこともあり、より深く物語の構造が理解できました。古典文学に馴染みがなくても、八犬伝の魅力や馬琴の語り口に触れられる一冊。初めて八犬伝の世界に足を踏み入れる方にもおすすめの入門書です。

本モス
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この本の魅力は、現代語訳で内容を理解した後、フリガナ付きの原文で馬琴の文章そのものに触れられる点。江戸時代後期の言葉遣いながら、馬琴の語り口には独特のリズムと軽妙さがあり、古典に不慣れな私でも楽しく読むことができました。八犬士それぞれに魅力がありますが、中でも信乃の活躍には心躍らされます。何度も映像化・舞台化されてきたのも頷ける、現代ファンタジーと並べても遜色のない圧倒的な物語世界に脱帽です。

本モス
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八犬伝の本を2冊紹介しましたが、私のおすすめは平岩弓枝さんの現代語訳を先に読んで、その後にビギナーズ・クラシックスで原文に触れる方法です。この順番で読むことで、物語がすんなりと理解できました。

椿説弓張月 1~5/曲亭馬琴

歴史上実在した源氏の武将・源為朝を主人公に、馬琴が壮大な物語を紡ぎ出した長編伝奇小説。強弓で知られる為朝は、御所での無礼が原因で九州へ下向し、武勇で九州一帯を支配。保元の乱では崇徳院方として戦うも敗れ、伊豆大島へ流刑となります。しかし物語はここからが本番。史実を越えて、為朝は琉球王国へと渡り、新たな戦いに身を投じていくのです。民のために戦い、悪を許さない武将の生き様を描いた、スケール満点の冒険活劇です。

  • 源為朝(みなもとのためとも)・・・清和源氏。源為義の八男。強弓の武将。保元の乱で崇徳院方につき敗れ、伊豆大島に流される。
  • 崇徳院・・・父は鳥羽。弟は後白河、近衛。鳥羽崩御のあと、後白河と争う(保元の乱)。
  • 白縫(しらぬい)・・・阿曽忠国の一人娘で、為朝の正妻となる。勇猛な女武者。
  • 八町礫紀平治大夫(はっちょうつぶてのきへいじだいふ)・・・為朝の家来。石の礫で獲物を仕留め、百発百中の腕前をもつ。
  • 寧王女(ねいわんにょ)・・・琉球国の王女
  • 曚雲国師(もううんこくし)・・・琉球国を簒奪しようとたくらむ怪僧。
本モス
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『南総里見八犬伝』の影に隠れがちな『椿説弓張月』。馬琴作品という認識すらなく、源為朝についてもよく知らなかった私が、新訳発売の案内に誘われて手に取ったところ、予想を遥かに超える面白さでした。
おすすめポイント① 挿絵がすべて葛飾北斎という贅沢さ。
おすすめポイント② 江戸時代の作品とは思えないほど緻密に張り巡らされた伏線の数々。
おすすめポイント③ 馬琴ならではの勧善懲悪で、最後まで爽快に読める安定感。
江戸の庶民たちもこの物語に熱狂したのだろうと思うと、数百年の時を超えて同じ楽しみを味わえたようで、不思議な感慨がありました。

本モス
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馬琴の物語を読むと、「日本にもこんなに素晴らしいファンタジーがあったんだ」と、なぜか少し誇らしくなってしまいます。『八犬伝』も『椿説弓張月』も、ストーリーの面白さはもちろん、登場人物のネーミングに込められた意味や工夫まで秀逸です。江戸時代の読者たちも同じようにわくわくしていたのかなと想像すると、時代を超えた楽しさを共有できた気がします。

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